登園してすぐ、
「あ!先生!チョウチョになってる!」
一人が気付くと、次々と飼育ケースを覗く子ども達。毎日関心を寄せて覗いているからこそ、変化にすぐ気付けるのだと実感。
「あれ?でもこれ、なんか変…」
「なんか羽根が丸まってる…」
「弱ってんの?」
そこへチョウのことをよく知っているA児が
「あ!それはね。羽根がまだ濡れてるってこと。今、乾かしてるの」
とみんなに伝えます。
そこへ新たに興味をもったB児がやってきたので、
教師「このチョウ、まだ羽根が濡れてるんだって」
B児「濡れてるって?」
教師(そばを通りかかったC児に)「ねぇねぇCちゃん、Bちゃんが『濡れてるって?』だって。説明してあげてくれる?」
C児「あぁ。あのね、『濡れてる』っていうのは、ほら、『洗濯物が濡れてる』とかってあるやん?それとおんなじ」
(いやいや、Cちゃん…なんでチョウの羽根が今濡れてるの?ってことを説明してほしかったんだけど、『濡れる』という状態を説明してくれたってことなのね…あぁ、私の言い方が悪かったか…うーん、どうしようか…)
するとそばを通りかかったD児が
D児「あ、そうそう。ほら、洗濯物って濡れてる時、クシャクシャってなってるやろ。それと同じってこと」
B児「あぁ~(納得した様子)」
(いや、Dちゃんもそうじゃなくって…)
と思いながらも、もう一度私も、チョウの羽根をよく見てみました。
(確かにクシャクシャってなっていて、濡れている洗濯物と同じにも見える…。)そこで
教師「じゃ、濡れてるのが乾いたら?」
C児「乾いたら、羽根がピーンってなるねん」
D児「そやねん。洗濯物も乾いたらピーンってなるやろ」
(確かに…)
そのあと、A児がB児に、蛹からチョウが出てきたばかりの時は羽根が濡れていること、それを今乾かしているところでまだ飛べないこと、今は割りばしなどで止まれる場を作ってやること、などを、実際にやって見せながら詳しく伝えてくれていました。
子ども同士のやりとりは、時として、筋が通っていないようにも、やりとりが成立していないようにも受け取れるかもしれません。思わず口もはさんでしまいたくなります。しかし、子ども達は、友達や先生の話を聞いて、自分の身近な生活や経験したことと関連付けながら、思いや考えを自分なりの言葉で懸命に伝えようとしており、子ども同士でその思いがつながる瞬間があるんだなぁ…と、D児、E児の姿から感じました。いかにも子どもらしい表現で…。
「あ、なんか飛びそう」
「あ!飛んだ!」
チョウは、ヒラヒラと低いところをしばらく飛ぶと、すぐ床に落ちてしまいます。そっと手に乗せ様子を見守ります。
「がんばれ」
「ちょうちょさん、あとちょっと。がんばれ」
自然と子ども達から声援がこぼれます。
降園直前、もう一度クラス全員でチョウの羽根を見てみると、まだ乾ききっていないようで、家庭から幼稚園に連れてきてくれたA児が、今日は家に連れて帰ってくれました。無事に羽ばたけるようになっていることを願います。
年中組の時も、同じようにアオムシがチョウに孵る過程をみんなで見る経験もしましたが、今年度、その当時との明らかな違いは、子ども達同士が思いや気付きを伝え合い、共有している、ということなのだと感じる一コマでした。